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にあると考えられる。つまり活動量が多ければ、集権システムと衝突する機会が増えることになる。また一般的にいわれる大都市の高い政策遂行能力という<実態>は、自治体の裁量を統制する集権システムという<形式>との間の乖離を生みだし、活動量の多さとあいまって二重行政や調整ロスに対する不満を一般市町村以上に亢進させるからである7)。
次に、?A一般市町村と共通した問題の延長線上にあるが、大都市空間の特性により大都市問題として議論されているものがある。その代表的なケースに、指定都市の多くが経営している地下鉄事業がある。後述の指定都市の要望においても取り上げられているが、都市計画法で地下鉄事業を都市計画決定する場合には知事決定となり、都市計画法の制度問題がここでも顔を出す。また鉄道事業法上、地下鉄建設の事業免許は運輸大臣により、これを道路下に縦断して敷設する場合は建設大臣の許可事項となる。このように権限の所在が輻輳しており、都市計画決定の意味が希薄になっている。また工事施行認可や道路敷設工事施行認可、道路敷設工事施行方法承認、工事計画、鉄道敷設の変更認可といった国の関与が、施策の進行段階ごとに存在している。さらに市営バス事業と共通する運賃設定、変更にかかわる国の関与も存在している8)。このような大都市空間の特性がもたらす問題は、地下鉄事業のほかにも、ウォーターフロント開発、土地の高度利用、新交通システム建設などにもあらわれる。議論の中で登場する?Aの問題は、?Bの問題に接続することになるが、要するに大都市特例のメニューの固定性が時代適合性を喪失し、結果的に大都市空間の変貌と行政ニーズの変化に対する感度を弱めているという認識である。
?Bが大都市制度固有の問題、いいかえれば指定都市制度の構造的問題にかかわる議論である、これについても従来から指摘されているが、第1が機関委任事務中心の大都市特例の問題である。この点は、指定都市の府県並みということが基礎自治体として特例的に権限を保持しているというよりも、指定都市の長が「国の機関」である道府県知事に仲間入りしているという大都市特例の性格の一端を示している。指定都市制度批判では、特別市制度とは異なり道府県に属するためその統制を受けざるをえないという議論が主流である。そのことによって能力に見合った自律性を発揮できないということは確かであろう、ただし、指定都市が「市町村でありながらも部分的には市町村ではない」ということに対する目配りも同時に必要である、これは、一般市町村が受けている県・国からの制約に加えて、「指定都市の長」が道府県知事並であることによる国の統制を直接受けているという問題である9)。したがって、現行制度を前提として考えると、指定都市は、自治事務を中心とする新事務区分によって、道府県が「完全自治体化」できるかどうかということに

 

 

 

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